『スターダスト』

yoruyuki2007-11-20

あっさりしたタイトルとファンタジーげというよりメルヘンな風情であまり大したヒットにはなってなさそうだけど、良作。満足。
デニ郎のブラジル再来と見紛うヒーローっぷりとミシェル・ファイファードロンジョっぷりとか色々素晴らしいのだが、なにがすごいかってそこかしこに溢れる「ニール・ゲイマンっぽさ」であった。
このゲイマン感、彼のコミックないし小説の読者ならある程度ニュアンスが通じるんじゃないかと思うんだが、これがなんつーか実に言語化しにくい。
ベースは結構正当なおとぎ話の体裁なのに実にこう安心できないというか陶酔できないというか、例えば7人の兄弟王子が王位継承権をかけて互いに争っているという王道中世ファンタジー設定に嘘はないんだけど、本当に7人全員が純粋かつ自己中心的に王位を狙って真っ向からぶっ殺し合ってたまに本当にぶっ殺されるのになんか共存している、みたいな作りは実にゲイマンっぽいと思うんだけれど。
思うに、ファンタジーというジャンルが持ってる陶酔じみた現実逃避要素バリバリな世界観に、こってり悪意とか冗談とか諧謔とか皮肉とかいじわるを満載する、『サンドマン』の夢と悪夢のパラレルみたいな「揺れ」がゲイマン感の正体なんじゃないだろうかね。きもちわるきもちいい。