高橋葉介『夢幻紳士〜幻想篇』

出たよ出たよう! おっかない方の魔実也ですよ。
二十年描きに描いてるフォーマットをまだいじくるかこの大先生。
単発、長編問わず天才的な変則作話法はこの作家のベース・フォーマットなんだけれど、今作は通常とは一線を活す大技です。
虚構と現実、男と女、被害者と加害者、善と悪、ハッピイ・エンドとバッド・エンド、目まぐるしく入れ替わる表と裏。いつしかそれらの意味は混沌に飲み込まれ、消滅する。
真実は正にも邪にも意味などなく、ただ夢幻に惑って生きること。


‥‥なんか安っぽくなってくな。


しかし、これだけカオスなお話だというのに、手綱が全てきっちり捕られて一貫性すら持たしてあるのってどういうセンスしてんだろうなあ。思いついて纏めるまでの体系がまったく想像つかん。お化けですよ。もう。
そして勿論森羅万象に動じない我らが(つーか全婦女子の)主人公、今回も悪女、物の怪問わず女は食いまくりだ! 個人的に好きな話は『渚にて』。かわいい。


それにつけても数十冊に登るシリーズの最新作だっつーのに、初見の人でも度肝を抜かれるこのクオリティ。漫画誌で連載がないのが信じられません。
椎名高志(いつ始まるんだ『絶対可憐チルドレン』)とか、売れる漫画とクオリティは関係ないのだなあ。
『(書いてあったけど自粛。お好きなタイトルを入れておくれ)』とか読んでる場合じゃないと思うんだけどなあ。

夢幻紳士 幻想篇

夢幻紳士 幻想篇