中山昌亮『不安の種 3』


巷でどのくらい話題なんでしょうか。今最も新しい体裁であろう反則恐怖漫画最終巻。てか終わっちゃったのか。勿体無い。

今ホラー業界は活発な新陳代謝をしている様な状況だと思います。
呪怨』や『新耳袋平山夢明の一連のシリーズなどの文脈から産まれた機軸の新しい恐怖漫画としては『不安の種』が一番正統な線ではないかなあと。
平たく言うと「怖い話の核の羅列」です。
プロセスを見せて最後に落とすって基本的なスリラーの理論なんですが、そのオチに当たる「怖い核」だけを見せるって普通ならぜったいやっちゃいけない凶器攻撃のような作法なんですが、説明しない整理つけられない故に後味悪いことによって発生する嫌悪感込みの恐怖が結果的に少ページ、読切形式といった形態を逆手に取って表現してるわけで、こんな作り方怖くないわけがないです。
『新耳』から『「超」怖』が生まれた、つまり一切手を加えない実話怪談から演出した実話怪談が生まれた。小中理論から『呪怨』が生まれた、「従来のスリラー理論から抽出した体系的な恐怖の方程式」を捉えなおして自由な恐怖機械を作り出す。書いてる自分しかわかんないですね。これ。
そういう部分からこういう形式を見出したんだろうなあ、というかその血脈から生まれた最初の漫画作法なんじゃないかな、というのが言いたいのです。


しかしこの人それだけではなく、「なんか尋常じゃなく禍々しいもの」の描写力が半端じゃなく、特に実体系が何回見ても怖い。
『礼儀知らず』『高橋君の理由』の怖気っぷりたるや、禍々しさを具体的に表現することって出来るんだ、というかそういう言い方でしかこの背筋の寒さを説明できませんのです。

惜しむらくはネタに困ったか、かなり散漫かつバラエティに富んだ話が多いとこ。1,2辺りの方が徹底していて怖かったかな、と。
巻末の実体験話が勿体無いくらいすごく普通な怪談語りなんだけど、描写力だけでも全然怖く出来ますよって言ってるみたいで返って面白かったですけど。


怖い話嫌いな人はくれぐれも読まないように一つよろしく。

不安の種 (3) (ACW champion)

不安の種 (3) (ACW champion)